逆算で立てた経営計画は、立てた翌日から少しずつ外れていきます。 外れること自体は問題ではありません。問題は、外れたと気づくのが遅いことです。

月次決算で数字がそろうのは、多くの会社で翌月の中旬です。 今月の遅れに気づくのは、早くても1か月半後になります。そのときには、 取り返すための日数がもう残っていません。

日次決算は、この気づくまでの時間を1か月半から数日に縮める仕組みです。

月次決算だけでは、計画は答え合わせにしかならない

売上目標の根拠で書いたとおり、逆算した計画には 「これを下回ると返済と投資が回らない」という線があります。 線があるからこそ、その線に今どれだけ近いかを知る手段が要ります。

月次決算は、その手段としては遅すぎます。

月次決算日次決算
締める間隔1か月に1回毎日
数字がそろう時期翌月の中旬当日か翌朝
優先するもの正確さ速さ
分かること先月どうだったか今月このままで届くか
使い道確定・税務・金融機関への説明月の途中で手を打つ

月次決算は、終わった月の成績表です。成績表を見て反省はできても、 その月の結果はもう変えられません。

日次決算で毎日見るのは、粗利総額(MQ)だけでいい

毎日決算というと、仕訳を全部そろえる重い作業を想像するかもしれません。 日次決算で必要なのは、そこまでの精度ではありません。

見るのは粗利総額(MQ)、つまり売上から原価を引いた残りの合計だけです。 理由は、固定費(F)が月の途中で大きく動くことはほとんどないからです。 家賃も人件費も、月初に決まった額が出ていきます。

経常利益(G)= 粗利総額 − 固定費

固定費がほぼ一定なら、利益を動かしているのは粗利総額だけです。 毎日の粗利総額さえ追えていれば、月末の利益はほぼ読めます。 粗利を先に見るべき理由は粗利と利益の違いにまとめました。

月の計画を、1営業日あたりの個数まで降ろす

日次で比べるためには、計画のほうも日の単位に降ろしておく必要があります。 モデルとして、次の会社で考えます(仮設のモデル例です)。

  • 月の目標経常利益(G)75万円、月の固定費(F)225万円、粗利率40%
  • 主力商品の1個あたり粗利600円、今月の営業日は25日
この会社の今月の計画(モデル例)
目標利益75万円と固定費225万円から、今月稼ぐべき粗利総額300万円が決まります。赤枠の300万円を営業日と1個あたり粗利で割り、毎日のものさしにします。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 40.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。
単位粗利総額の目標主力商品の個数
300万円5,000個
1営業日12万円200個

1日の必要個数 = 月の粗利総額 ÷ 営業日数 ÷ 1個あたり粗利 = 300万円 ÷ 25日 ÷ 600円 = 200個

損益分岐点を1日の個数まで落とす考え方は 損益分岐点は「売上高」で止めるなと同じです。 日次決算では、この200個が毎日の答え合わせのものさしになります。

気づく日が遅いほど、1日に取り返す個数は増える

10日目の終わりに、粗利総額の累計が102万円だったとします。 計画では120万円まで進んでいるはずなので、18万円の遅れです。 1日あたりに直すと、200個の計画に対して170個しか出ていません。

このペースのまま月末を迎えると、粗利総額は255万円に着地します。

今月の日別の粗利総額(モデル例)
計画(日別)実績(日別)計画の累計実績の累計固定費(F)
累計(左の目盛り)日別(右の目盛り)
実績の累計(25日目まで)255万円
計画の累計(25日)300万円
固定費(月)F225万円
粗利が固定費を超えた日計画 19日目/実績 23日目
計画は曜日で上下しますが、5日ごとの合計は60万円、平均すれば1日12万円です。10日目の時点で実績の累計は102万円、計画の累計は120万円で、二本の線の開きがそのまま18万円の遅れです。計画どおりなら19日目に固定費225万円を回収できるはずが、実績では23日目までずれ込み、月末に残る経常利益は30万円です。薄い棒が1日の計画、濃い棒が実績です(右の目盛り)。線は月初からの累計で(左の目盛り)、 点線が計画、実線が実績、紫の横線が月の固定費(F)です。 累計の線が紫の線を越えた日に固定費を回収し終え、そこから先の粗利がその月の経常利益(G)になります。

遅れに気づいた日によって、取り返すための負担がどう変わるかを並べます。

気づいた日その時点の累計残りの営業日残りで必要な粗利総額1日に必要な個数
10日目102万円15日198万円220個
20日目204万円5日96万円320個
月末(月次決算で判明)255万円0日45万円取り返せない

10日目に気づけば、いまの170個を1日220個にすれば届きます。 20日目では1日320個が必要になり、いまのペースのほぼ倍です。 月次決算で気づいたときには、取り返す日がもう1日も残っていません。

同じ遅れでも、気づく日が早いほど、1日あたりの負担は小さくて済みます。 日次決算の値打ちは、数字の正確さではなく、この日数を買えることにあります。

粗利の不足は、そのまま利益の不足になる

月末に粗利総額が255万円に着地すると、何が起きるかを図にします。

粗利総額が255万円に着地した場合(モデル例)
固定費225万円は売上が落ちても1円も減りません。粗利総額が45万円足りないと、その45万円がそのまま赤枠の経常利益から消え、75万円の計画が30万円になります。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 40.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。
計画着地
粗利総額300万円255万円−45万円
固定費225万円225万円0円
経常利益75万円30万円−45万円(−60%)

粗利総額は15%しか減っていないのに、利益は60%減っています。 固定費が減らない以上、粗利の不足は1円残らず利益の不足になるからです。

しかも月次決算で気づくのは翌月の中旬です。その間も同じペースで走っていれば、 翌月もすでに半月ぶん、同じ遅れを積み上げています。

遅れに気づいたら、何を動かすか

1日220個にするのが難しい場合もあります。動かせるのは数量だけではありません。

打ち手残り15日で198万円を稼ぐには
主力商品の数量を増やす1日220個(いまより50個増)
1個あたり粗利1,500円の商品に重点を移すその商品だけなら1日88個
値引きをやめる・原価を見直す1個あたり粗利が上がったぶん、必要な個数が減る

どの商品で埋めるかによって、必要な個数はまったく違います。 この見方ができるのは、商品ごとの1個あたり粗利を持っているからです。 考え方は単品管理のやり方で詳しく書きました。

反対に、月の数字を良く見せるために広告費や研修費を止めるのは避けてください。 これらは戦略費(F4)、つまり来月以降の粗利を作るための支出です。 今月の利益は守れても、翌月以降の粗利が細ります(固定費と変動費の分け方)。

まとめ

  • 計画は外れるもの。問題は外れたことに気づくのが遅いこと
  • 月次決算で遅れに気づくのは翌月中旬。日次決算なら数日で気づける
  • 日次で見るのは粗利総額だけでよい。固定費はほぼ一定で、利益を動かすのは粗利だから
  • 月の計画を1営業日あたりの個数まで降ろし、毎日の累計と比べる
  • 気づく日が早いほど、取り返すための1日の負担は小さい

GYAKUSAN を使うと、1日のものさしが先に出る

日次決算で毎日比べるには、「今日は何個売れていれば計画どおりか」が先に決まっている必要があります。 この記事で手で計算した順番を、そのまま自動で行うのが GYAKUSAN です。

入れる数字GYAKUSAN が出す数字
残したい経常利益(G)と固定費(F)稼ぐべき粗利総額(MQ)
粗利率必要な売上(PQ)
部門と商品の単価・原価部門ごとの目標と、商品ごとの必要販売数
年間の営業日数(最初は300日)1営業日あたり何個売ればよいか

この記事のモデル例を1年分にして入れると、こうなります。

経常利益900万円 + 固定費2,700万円 = 稼ぐべき粗利総額 3,600万円(粗利率40%で必要売上9,000万円)

1個あたり粗利600円 → 年間 60,000個 → 年間300営業日で 1日200個

記事の中で毎日の答え合わせに使った200個が、画面にそのまま出てきます。 商品の行を開くと、1営業日あたりの個数が表示されます。

GYAKUSAN が出すのは、計画の側のものさしです。毎日の実績は、レジや売上の記録から その日の粗利を出し、このものさしと並べてください。登録は要らず、入れた数字はサーバーに送られません。