分け方の基準は1つだけです。売れなかった月にも出ていくなら固定費、出ていかないなら変動費。 これだけで、迷う費目のほとんどは判定できます。

言い換えると、その費用が売上と連動するかです。売上に連れて増えたり減ったりするもの、 つまり原価にあたるものが変動費。連動せず、売上と無関係に出ていくものが固定費です。

会計の教科書には細かい分類が並びますが、経営計画で使う目的はひとつしかありません。 粗利総額を出すことです。粗利が出せなければ、 経営計画の立て方で解説した逆算は一歩も進みません。

判定は「売れなかった月」を想像する

来月、商品がひとつも売れなかったとします。それでも払うものが固定費です。

費目売れなかった月は?判定
材料費・仕入仕入れないので出ない変動費
外注費(案件ごとに発注)案件が無ければ出ない変動費(例外は後述)
配送料・運賃送るものが無ければ出ない変動費
カード決済手数料売上が無ければ出ない変動費
家賃出る固定費
正社員の給与出る固定費
水道光熱費出る(基本料金と店を開ける分)固定費
広告費出る(止めない限り)固定費
借入の利息出る固定費
減価償却費出る(帳簿上)固定費

判断がつかない費目に出会ったら、この1行を自分に聞いてください。 「売上ゼロの月、これは請求されるか」。 答えが出ないことはほとんどありません。

いちばん迷うのは人件費。実務では固定費に入れる

教科書には「アルバイトの人件費は変動費として扱える」と書かれていることがあります。 シフトを売上に合わせて増減できるから、という理屈です。

それでも、固定費に入れることをおすすめします。 理由は3つあります。

  1. 売上が半分になった月に、人件費は半分になりません。 翌週のシフトはもう組んであり、 生活のかかっている相手に「明日から半分で」とは言えません
  2. 人は売上に比例して雇えません。 3割増やしたいときに3割の人を雇うことはできず、 1人単位でしか増えません。比例しないものを比例費として扱うと計画がずれます
  3. 人は費用ではなく戦力です。 削って利益を出す対象ではなく、粗利を稼ぐ側にいます

GYAKUSAN でも人件費は F1(固定費の1つ目) として扱います。

いちばん悩ましいのは外注費。売上と連動するかで分かれる

同じ「外注費」という科目に、性質のまったく違う支払いが同居しているためです。 ここでも見るのは売上と連動するかの一点です。

連動するなら変動費。 これは実質的に原価です。

  • 受注した動画1本ごとに払う編集費
  • 案件ごとに発注するデザイン・ライティング
  • 製造の外注加工賃

いずれも「その売上があるから発生した費用」で、受注が無ければ1円も出ません。

連動しないなら固定費。しかも多くは F4 の戦略費です。

  • 自社サービスの紹介動画の制作
  • 採用サイトやパンフレットの制作
  • 月額で契約している顧問・コンサル

これらは売れても売れなくても出ていきます。同じ制作会社への同じ「外注費」でも、 お客様に納品するために払ったのか、自社の未来のために払ったのかで置き場所が変わります。

見分け方は「どの売上に紐づくか言えるか」

判断に迷ったら、この質問をしてください。

この外注費は、どの売上に紐づいていますか。

「A社の案件です」と即答できるなら変動費です。 「うちを知ってもらうためです」としか言えないなら、それは売上と連動していません。

連動しない外注費を F2 の経費に入れない

固定費に回すところまでは多くの会社ができています。問題はその先です。 F2(経費)に混ぜると、削れる経費に見えてしまいます。

紹介動画も採用パンフも、未来の売上を作るために先に払ったお金です。 利益が苦しい期に真っ先に削られると、翌期以降の売上が細ります。 F4(戦略費)という別の箱に置いておけば、「これは削ると将来が細る支出だ」と 数字の置き場所そのものが教えてくれます。

分け方を間違えると、増販の効果を読み違える

同じ会社を2通りに分けてみます。売上5,000万円・材料費など1,500万円・人件費1,000万円・ その他の固定費1,500万円の会社です(仮設のモデル例です)。

正しい分け方:人件費を固定費に入れる

人件費を固定費に入れた場合(モデル例)
変動費は材料費など1,500万円だけ。赤枠の粗利総額は3,500万円で、粗利率は70%になります。人件費1,000万円はその他の固定費と合わせて2,500万円です。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 70.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

誤った分け方:人件費を変動費に入れる

人件費を変動費に入れた場合(モデル例)
変動費が2,500万円に膨らみ、赤枠の粗利総額は2,500万円、粗利率は50%まで下がります。売上も経常利益も1円も変わっていないのに、稼ぐ力だけが小さく見えます。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 50.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

売上5,000万円も経常利益1,000万円も、まったく同じです。 違うのは真ん中だけ。 粗利率が70%と50%に分かれます。

この差は、次に打つ手を考えたときに出てきます。売上が1割(500万円)増えたとします。

粗利率増える粗利経常利益
人件費を固定費に(正しい)70%+350万円1,350万円
人件費を変動費に50%+250万円1,250万円

売上が1割増えても、正社員の給与は増えません。ですから実際に増える利益は350万円です。 人件費を変動費に入れていると、100万円ぶん少なく見積もることになります。

広告を打つか、値引きしてでも数を取りにいくか。その判断はこの数字で変わります。 分け方の間違いは、金額のミスではなく打ち手の選択を誤らせるという形で表に出ます。

厳密さより、一貫性のほうが100倍大事

「この費目は本当に変動費でよいのか」と悩む時間は、ほとんど報われません。 1円単位で正しく分けることに価値はないからです。

価値があるのは、毎期まったく同じ基準で分け続けることです。 去年は外注費を変動費、今年は固定費にすると、粗利率が動きます。 すると「粗利率が5%下がった」のが実態の悪化なのか分類を変えただけなのか、 誰にも分からなくなります。比較できない数字は、経営の役に立ちません。

迷ったときの寄せ方も決めておきます。迷ったら固定費に寄せてください。

  • 粗利率が低めに出る
  • 必要な粗利総額を得るための必要売上が多めに出る
  • つまり計画が安全側に倒れる

逆に変動費へ寄せると粗利率が実力より高く見え、必要売上を少なく見積もります。 届かない計画を「届く」と誤認するほうが、経営としては危険です。

GYAKUSAN では固定費をF1〜F5に分ける

固定費とひとまとめにせず、5つに分けて持ちます。性質が違うものが混ざっているためです。

費目性質
F1人件費いちばん大きく、いちばん動かしにくい
F2経費(家賃・水道光熱費・通信費など)日々の運営費
F3営業外費用(支払利息など)本業ではなく財務の費用
F4戦略費(広告・研修など)未来への投資。削ると将来が細る
F5減価償却費現金が出ていかない詳しくはこちら

分けておくと「固定費を減らす」という話が、 どれを減らすのかという具体的な議論になります。 F4 の戦略費を削って当期の利益を作るのと、F2 の経費を見直すのとでは意味がまったく違います。

まとめ

  • 判定基準は1つ。売れなかった月にも出ていくか。言い換えると売上と連動するか
  • 人件費は固定費。売上が半分になっても人件費は半分にならないため
  • 外注費は連動するかで分かれる。連動しないものは F2 の経費ではなく F4 の戦略費
  • 分け方を間違えると金額ではなく打ち手の判断を誤る(増販の効果を読み違える)
  • 厳密さより一貫性。迷ったら固定費へ寄せると計画が安全側に倒れる

自社の売上と変動費・固定費を入れると、粗利率と必要売上がその場で出ます。 人件費の置き場所を入れ替えて、必要売上がどれだけ動くかを見比べてみてください。