経営会議で数字が動かないのは、資料が足りないからではありません。 見ているのが実績の報告だけで、計画のつなぎ目を誰も確かめていないからです。
見るべきつなぎ目は2か所だけです。全社の目標と部門の合計、部門の目標と商品の積み上げ。これがこの記事の結論です。
報告会で終わるのは、数字がつながっていないから
議題が実績の報告で埋まると、会議は数字を読み上げる時間になります。 数字は並んでいるのに、報告だけでは打ち手が決まらないのは、その数字がつながっていないからです。
売上が前年比102%という報告は、良し悪しを判断できません。 比べる相手が去年であって、今期残したい利益から逆算した数字ではないためです。
会議に必要なのは、達成したかどうかの報告ではありません。 計画の上流と下流が合っているか、合っていないならどこで何万円ずれているか、の2つです。
見るのはつなぎ目の2か所だけ
逆算で作った計画は、上から下へ3段になっています。
| 段 | 何を決めるか |
|---|---|
| 全社 | 残したい経常利益(G)と固定費(F)から、必要な粗利総額と必要売上 |
| 部門・店舗 | 全社の粗利総額を配った、部門ごとの粗利総額の目標 |
| 商品 | 部門の目標を満たすための、商品ごとの単価・原価・数量 |
計画が崩れるのは段の中ではなく、段と段のつなぎ目です。 全社で3,000万円と決めた粗利が、部門に配ると合計でそこに届かない、という配り漏れが起きます。
だから会議で確かめるのは次の2か所になります。
① 全社の目標 ⇄ 部門の合計
② 部門の目標 ⇄ 商品の積み上げ
つなぎ目① 全社の目標と部門の合計
モデルとして、2店舗の会社で考えます(仮設の数字例です)。 残したい経常利益(G)800万円、固定費(F)2,200万円なので、稼ぐべき粗利総額は3,000万円。想定の粗利率60%なら必要な売上は5,000万円です。
目的ではなく結果の数字
ここが経営の原資
この3,000万円を2店舗に配ります。 全社と部門をつなぐのは、粗利総額(MQ)です。 会議でいちばん大事に見るのはここです。
| 本店 | 2号店 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 粗利総額の目標 | 1,800万円 | 1,200万円 | 3,000万円 |
| 固定費の予算(直課) | 900万円 | 600万円 | 1,500万円 |
本社共通の固定費は、全社2,200万円から直課1,500万円を引いた700万円です。
会議では、部門の粗利総額を足して全社の3,000万円に届いているかを確かめます。 たとえば見込みが本店1,700万円、2号店1,350万円だったとします。
| 本店 | 2号店 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 粗利総額の目標 | 1,800万円 | 1,200万円 | 3,000万円 |
| 粗利総額の見込み | 1,700万円 | 1,350万円 | 3,050万円 |
| 差 | 100万円の不足 | 150万円の超過 | 50万円の超過 |
本店は目標に100万円届いていません。それでも2号店が150万円上回っているので、全社ではクリアです。 全社の目標は、部門の粗利総額の合計で決まるからです。 ただし、本店はこのままでよいわけではありません。本店がもう100万円積めば、全社にはさらに余裕が生まれます。本店の不足をどう埋めるかは、次のつなぎ目②で商品まで降ろして考えます。
部門に聞くのは、粗利総額と固定費の2つだけ
部門について会議で確かめるのは、次の2つです。
| 確かめること | モデル例 |
|---|---|
| 粗利総額(MQ)が目標に届いているか | 本店1,800万円・2号店1,200万円、合計3,000万円 |
| 固定費(F)が予算の中に収まっているか | 本店900万円・2号店600万円・本社共通700万円、合計2,200万円 |
部門の利益(G)は言わせなくて構いません。 部門ごとの売上も要りません。 全社の経常利益は、全社の粗利総額から全社の固定費を引いて決まります。粗利総額が合計で届いていて、固定費が予算の中に収まっていれば、経常利益800万円は自然に残ります。部門の利益を並べても、この2つ以上のことは分かりません。 売上は、次のつなぎ目②で見るとおり、計画どおりでも粗利が足りないことがあるので、判断を誤らせます。
逆に、配った目標の合計がそもそも3,000万円に届いていない(配り漏れがある)と、全部門が目標を達成しても全社の経常利益800万円には届きません。部門の粗利総額の合計が全社の固定費2,200万円を割り込めば、全社は赤字です。 配り方そのものは部門別・店舗別の目標の決め方で詳しく書いています。
なお、総額が収まっていても費目ごとに超えることがあります。 直課の人件費の合計だけが全社の人件費を上回る形で、総額しか見ない会議では見落とします(店舗別の固定費配分)。
つなぎ目② 部門の目標と商品の積み上げ
本店の目標は粗利総額1,800万円でした。 商品3つの見込み数量を置いて、積み上げがそこに届くかを見ます。
| 商品 | 単価 | 原価 | 1個あたり粗利 | 見込み数量 | 粗利総額 | 売上 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 1,200円 | 500円 | 700円 | 12,000個 | 840万円 | 1,440万円 |
| B | 800円 | 300円 | 500円 | 10,000個 | 500万円 | 800万円 |
| C | 2,500円 | 1,300円 | 1,200円 | 3,000個 | 360万円 | 750万円 |
| 合計 | 25,000個 | 1,700万円 | 2,990万円 |
粗利総額は1,700万円で、目標1,800万円に100万円届いていません。 ところが売上は2,990万円で、目標3,000万円との差はわずか10万円です。
ここがこの会議の山場です。 売上はほぼ計画どおりなのに、粗利だけが5.6%足りないという形になっています。
積み上げの粗利率は 1,700万円 ÷ 2,990万円 = 56.9%。想定した60%に3.1ポイント足りません。 商品ごとの粗利率は商品A 58.3%、商品B 62.5%、商品C 48.0%です。1個あたりの粗利が最も大きい商品Cが、粗利率では最も低く、これが750万円ぶん入ったことで全体が60%を割りました。商品Cを除いた2商品だけなら59.8%で、目標にほぼ届きます。
☝ 図をタップするか、横にスライドすると、その個数での粗利が出ます
商品ごとに粗利を並べる手順は、単品管理のやり方にまとめています。
不足は「あと何個」まで降ろして話す
100万円足りない、で会議を終えると、埋め方が決まりません。 不足を数量まで降ろさないかぎり、翌月も同じ差額が残りやすくなります。 不足額は1個あたり粗利で割って、数量に置き換えます。
追加で必要な数量 = 不足した粗利総額 ÷ 1個あたり粗利
| 増やす商品 | 1個あたり粗利 | 100万円に必要な追加数量 | 1営業日あたり(300日) |
|---|---|---|---|
| A | 700円 | 1,429個 | 4.8個 |
| B | 500円 | 2,000個 | 6.7個 |
| C | 1,200円 | 834個 | 2.8個 |
同じ100万円でも、商品Cなら1日3個弱、商品Bなら1日7個近くになります。 どれで埋めるかは、この3行を並べてから決める話になります。
商品Cで埋めた場合を、本店の損益の図で並べます。まず、いまの積み上げです。
商品A
=粗利MQ840万円
商品B
=粗利MQ500万円
商品C
=粗利MQ360万円
商品A+商品B+商品Cの合計
目的ではなく結果の数字
ここが経営の原資
商品Cを834個足すと、こうなります。
商品A
=粗利MQ840万円
商品B
=粗利MQ500万円
商品C+834個
=粗利MQ460.1万円
商品A+商品B+商品Cの合計
目的ではなく結果の数字
ここが経営の原資
売上だけを見ると、目標を約200万円も超えています。それでも粗利総額は、ちょうど目標の1,800万円です。 売上で追いかけると、あといくつ売れば足りるのかを見誤ります。 粗利で追いかければ、答えは834個です。
数量まで降ろすと、担当も期限も決められる大きさになります。 値上げで1個あたりの粗利を上げる手もあります。売れる個数が落ちなければ、必要な追加数量はその分だけ減ります(値上げで利益はどれくらい変わるか)。
会議の順番は、全社から商品へ降ろす
議題の順番は、逆算と同じ向きにそろえます。
- 全社の残したい経常利益と固定費を確認する(800万円・2,200万円)
- 必要な粗利総額と必要売上を見る(3,000万円・5,000万円)
- つなぎ目①を検算する(部門の合計と一致するか)
- 部門ごとに目標と積み上げの差を見る(本店は100万円不足)
- つなぎ目②の不足を数量に置き換える(商品Cなら834個)
部門の報告から始めると、全社の目標が後追いの確認になります。 先に全社を置いてから降ろすと、部門の話は配られた目標に対する過不足として整理されます。
商品の見込み数量は、会議の場で入れ替えて構いません。 「この数で届くか」を試す作業そのものが、会議で決めるべきことです。
会議に出さなくてよい数字
情報を増やすほど、つなぎ目は見えにくくなります。
| 出さなくてよい | 理由 |
|---|---|
| 部門別の売上前年比 | 比べる相手が去年で、今期の必要額と関係がない |
| 全社の試算表だけ | 合計しか分からず、どの段でずれたかが出ない |
| 部門ごとの売上順位 | 規模の順位が並ぶだけで、粗利の過不足が出ない |
| 部門ごとの利益 | 全社の利益は、全社の粗利総額と固定費で決まる。部門には粗利総額と固定費だけを聞けば足りる |
会議に必要なのは、2つのつなぎ目と、その差額と、差を埋める数量です。 この3つが出ていれば、資料は1枚で足ります。中身は部門ごとに1行、列は4つだけです。
| 部門 | 目標の粗利総額 | 積み上げの粗利総額 | 差額 | 差を埋める数量 |
|---|---|---|---|---|
| 本店 | 1,800万円 | 1,700万円 | 100万円の不足 | 商品Cで834個(1営業日2.8個) |
部門の数だけ行を足します。つなぎ目①の検算は会議の冒頭で済ませるので、この表には入れません。
まとめ
- 会議で見るのは実績の報告ではなく、計画のつなぎ目2か所
- つなぎ目①をつなぐのは粗利総額(MQ)。部門が未達でも、合計で届いていれば全社はクリア
- 部門に聞くのは粗利総額と固定費の2つだけ。部門の利益や売上は言わせなくていい
- つなぎ目②は部門の目標と商品の積み上げ。差が100万円なら100万円と言う
- 売上が計画どおりでも粗利が足りないことがある。粗利率で確かめる
- 不足は1個あたり粗利で割り、1営業日あたり何個かまで降ろす
GYAKUSAN を使うと、つなぎ目の差が数字で出る
つなぎ目の検算を手作業でやると、端数や配り漏れが起きやすく、どこでずれたのかを追うのに手間がかかります。 無料シミュレーター GYAKUSAN は、この記事の2つの検算をそのまま自動で行います。
| 入れる数字 | GYAKUSAN が出す数字 |
|---|---|
| 全社の経常利益(G)と固定費(F)、想定の粗利率 | 稼ぐべき粗利総額と必要売上 |
| 部門ごとの粗利総額の目標と直課の固定費 | 部門利益と、本社共通に残る固定費 |
| 商品ごとの単価(P)・原価(V)・見込み数量(Q) | 積み上げの粗利総額と、目標との差 |
| (自動) | つなぎ目①②の検算と、不足を埋める必要販売数 |
この記事のモデル例を入れると、こうなります。
全社:経常利益800万円 + 固定費2,200万円 = 粗利総額3,000万円、必要売上5,000万円
つなぎ目①:本店1,800万円 + 2号店1,200万円 = 粗利総額3,000万円(全社と一致)
本店:目標1,800万円 − 積み上げ1,700万円 = 100万円の不足(商品Cで834個ぶん)
無料版でも部門は2つ、1部門あたり商品は3つまで作れるので、この例はそのまま入ります。 登録は要らず、入れた数字はサーバーに送られません。
