部門や店舗に配るのは粗利総額であって、固定費ではない。 これがこの記事の結論です。

多くの会社が、本社の家賃や社長の給与まで店舗数で割って各店に背負わせています。 その瞬間、店長にとって目標は「自分では1円も動かせない費用を含んだ、納得できない数字」になります。

なぜ「固定費の均等割り」が現場を壊すのか

固定費を頭数で割ると、次の2つが同時に起きます。

  1. 動かせない費用の責任を負わされる。 本社家賃も社長給与も、店長には削る権限がありません。責任だけあって権限がない状態です。
  2. 成績が本社の都合で変わる。 本社が人を1人増やしただけで、現場は何もしていないのに各店の「利益」が悪化します。

数字が自分の行動とつながらなくなった瞬間、目標は他人事になります。 これは現場のやる気の問題ではなく、配り方の設計ミスです。

正しい配り方 — 粗利総額を配り、直課の固定費だけ持たせる

順番はこうです。

  1. 会社全体で必要な粗利総額を出す(目標利益 + 固定費)
  2. それを部門・店舗ごとの粗利総額の目標に配る
  3. 固定費は、その部門に明確に紐づくもの(直課)だけを持たせる
  4. 残りは本社共通の固定費として全社に残す

モデルとして、2店舗の会社で考えます(仮設の数字例です)。

まず会社全体の逆算です。残したい利益1,000万円、固定費2,000万円なら、稼ぐべき粗利総額は3,000万円。 粗利率60%なら必要な売上は5,000万円になります(この手順は経営計画の立て方で詳しく解説しています)。

会社全体の逆算(モデル例)
残したい利益1,000万円と固定費2,000万円から、稼ぐべき粗利総額3,000万円が決まります。粗利率60%なら必要な売上は5,000万円です。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 60.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

この粗利総額3,000万円を2店舗に配ります。

本店2号店合計
粗利総額の目標1,800万円1,200万円3,000万円
直課の固定費700万円400万円1,100万円
部門利益1,100万円800万円1,900万円

本社共通の固定費は、全社の2,000万円から直課分1,100万円を引いた900万円です。 これは本部が持ち、店舗には配りません。

部門の図は、全社の図をそのまま小さくしたもの

本店だけを取り出すと、会社全体と同じ形の図になります。

本店の目標(モデル例)
赤枠で囲った粗利総額1,800万円が、本店に配られた目標です。そこから直課の固定費700万円を引いた1,100万円が部門利益になります。本社共通の固定費は含めません。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 60.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

会社全体では利益と呼んでいたところが、部門では部門利益になります。 形が同じなので、店長は「自分の店の図」と「会社の図」を同じ読み方で理解できます。

部門の目標は「粗利総額」にする。売上でも利益でもない

配る単位を間違えると、正しく配っても現場は間違った方向に走ります。

配る単位何が起きるか
売上値引きして数を売れば達成できる。忙しくなるのに利益は増えない
利益(本社費込み)自分で動かせない費用が混ざり、納得できない他人事になる
粗利総額値引きすれば即座に未達。単価・原価・数量という自分の武器で戦える

粗利総額は「単価 − 原価」に数量を掛けたものなので、店長が動かせる要素だけでできています。 値引きした瞬間に目標から遠ざかるため、安売りに逃げられません。 同じ売上でも値上げと値引きで粗利が6倍違うことは、損益分岐点の記事で数字を並べています。

必ず検算する — 合計が全社と合っているか

配り終えたら、次の2つを必ず確認します。ここを飛ばすと計画は絵に描いた餅になります。

① 部門の粗利総額の合計 = 会社全体の必要粗利総額   1,800万円 + 1,200万円 = 3,000万円 ✓

② 部門利益の合計 − 本社共通の固定費 = 会社全体の目標利益   1,900万円 − 900万円 = 1,000万円 ✓

②が特に大事です。部門利益の合計(1,900万円)と全社の利益(1,000万円)は一致しません。 これは間違いではなく、本社共通の固定費900万円を配っていないためです。 差が本社共通の固定費とぴったり一致していれば、正しく配れています。

一致しないまま進めると、各店が目標を全部達成したのに会社は赤字、という事故が起きます。

まとめ

  • 部門・店舗に配るのは粗利総額。売上でも、本社費込みの利益でもない
  • 固定費は直課分だけ持たせ、本社共通分は全社に残す
  • 均等割りは、動かせない費用の責任を現場に負わせる設計ミス
  • 部門の図は全社の図と同じ形にすると、店長が同じ読み方で理解できる
  • 「部門利益の合計 − 本社共通の固定費 = 全社の利益」で必ず検算する

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