利益は「計算の結果」、現金は「残高の動き」。この2つは別物です。 これがこの記事の結論です。

決算書は黒字なのに預金が増えない。この状態は経理のミスではなく、 損益計算書に出てこないお金の動きがあるために必ず起きます。

利益と現金がズレる4つの原因

原因何が起きるか
借入金の元本返済費用ではないので利益は1円も減らないのに、預金だけ減る
設備投資現金は買った年に全額出るが、費用は減価償却で何年かに分かれる
在庫・売掛金の増加売上は立つが現金はまだ入っていない。増えた分だけ現金が寝る
税金・消費税の支払い利益が出た期と払う期がずれる。消費税は預かっているだけで自社のお金ではない

このうち中小企業で最も効くのが借入金の元本返済です。 利益をいくら出しても損益計算書には現れないため、「黒字なのに苦しい」の主犯になります。

利益がいくら現金に変わるのか

モデルとして、経常利益1,000万円を目指す会社で考えます(仮設の数字例です)。

この会社の利益計画(モデル例)
赤枠の経常利益1,000万円が、この会社の黒字額です。ここから現金がいくら残るのかを追いかけます。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 60.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

この1,000万円が、そのまま預金に増えるわけではありません。

金額説明
経常利益1,000万円決算書の黒字額
法人税等(30%)−300万円先に税金が引かれる
税引後利益700万円
減価償却費+100万円費用だが現金は出ていかない
増える現金800万円ここまでがシミュレーターの計算
借入金の元本返済−1,000万円費用ではないので損益に出ない
実際の預金の増減−200万円黒字なのに現金は減る

経常利益1,000万円の黒字を出しながら、預金は200万円減ります。 これが「勘定合って銭足らず」の正体です。

減価償却費は、逆に現金を残す

表の中で1つだけ現金を増やす方向に働いている項目があります。減価償却費です。

減価償却費は費用なので利益を減らしますが、実際にお金が出ていくのは設備を買った年で、 その後の年は帳簿の上で費用になるだけです。 したがって、利益を計算したあとに足し戻すと手元に残る現金になります。

増える現金 = 税引後利益 + 減価償却費

この性質を自己金融効果と呼びます。 設備投資の多い会社ほど、利益の額よりも手元に残る現金が多くなります。 店舗や部門が複数ある会社は、部門別・店舗別の目標の決め方もあわせてご覧ください。

返済に耐える利益目標を逆算する

ここまでが分かると、目標利益の最低ラインを計算できます。 借入返済を現金でまかなうために必要な利益は、こう出します。

必要な経常利益 =(年間の返済額 − 減価償却費)÷(1 − 税率)

先ほどの会社なら、(1,000万円 − 100万円)÷ 0.7 = 約1,286万円です。

ここで割り算を忘れないことが重要です。 「返済額から減価償却費を引いた900万円を稼げばよい」と考えると、税金の分だけ足りません。 利益には先に税金がかかり、残った額で返済するからです。 900万円の利益では、税引後は630万円にしかならず、返済に330万円足りません。

借入がある会社にとって、目標利益は「欲しい額」ではなく「返済に必要な額」から決まります。 この利益を出発点にして売上や販売数まで降ろす手順は、経営計画の立て方にまとめています。

まとめ

  • 利益と現金は別物。損益計算書に出ないお金の動きがある
  • 最大の原因は借入金の元本返済。費用ではないので利益を減らさずに預金を減らす
  • 増える現金の目安は「税引後利益 + 減価償却費」
  • 減価償却費は現金が出ていかないので、手元には残る(自己金融効果)
  • 返済がある会社の目標利益は「(返済額 − 減価償却費)÷(1 − 税率)」が最低ライン

無料シミュレーター GYAKUSAN では、目標利益と固定費を入れると、 税金を引いたあとに手元へ残る現金と、期末の預金残高まで自動で計算されます。 借入金の元本返済は損益に出ない支出のため計算には含まれません。 出てきた「増える現金」から、ご自身の年間返済額を引いてご確認ください。