店舗別の固定費配分がおかしく見えるのは、配賦の基準を間違えているからではありません。配ってはいけない費用まで配っているからです。 これがこの記事の結論です。

本社の家賃も社長の給与も、店長には1円も動かせません。 基準を精密にするほど計算は複雑になり、納得からはむしろ遠ざかります。

配賦基準を変えても納得は出ない

本社費を店舗へ配るとき、実務でよく使われる基準は4つです。 どれを選んでも、現場からは同じ種類の不満が返ります。

配賦基準配る根拠現場から出る不満
店舗数で均等分かりやすい売上の小さい店ほど重くなる
売上高比稼いだ店が多く負担売るほど本社費が増える
人員比人を使う店が多く負担人を減らすほど有利になる
面積比場所を使う店が多く負担立地を決めたのは本部である

基準を入れ替えると、負担の重い店が入れ替わるだけです。 配る本社費の総額は1円も変わらないため、店舗の間で不満が移動しているにすぎません。

おかしいと感じる正体は権限と責任のズレ

配賦への違和感は感情の問題ではなく、構造から出てきます。

  1. 本社家賃も社長給与も、店長には削る権限がない
  2. 本社が人を1人増やすと、現場は何もしていないのに各店の利益が悪化する
  3. 売上高比で配ると、売上を伸ばした店ほど負担が増える

権限のない費用で評価される数字は、行動につながりません。 店長が動かせるのは単価・原価・数量の3つだけで、本社費はそこに入っていないからです。

店長が動かせるのは単価(P)・原価(V)・数量(Q)とその店の人件費・家賃(直課の固定費)だけで、本社の家賃・社長の給与・本部の管理部門の人件費は動かせないことを左右に並べた図
赤枠の本社共通の固定費(F)は、店長がどれだけ努力しても1円も減りません。店舗に配ってよいのは左側だけで、右側は本部が持ち続けます。この線引きが配賦の悩みを消します。

配るのをやめると数字が現場の言葉になる

やることは単純で、配るものと残すものを分けるだけです。

  1. 会社全体で必要な粗利総額を出す(目標経常利益 + 固定費)
  2. それを店舗ごとの粗利総額の目標に配る
  3. 固定費は、その店舗に明確に紐づくもの(直課)だけを持たせる
  4. 残りは本社共通の固定費として全社に残す

店舗が背負うのは、自分で採用し、自分で契約した費用だけになります。 配り方そのものの手順は部門別・店舗別の目標の決め方にまとめています。

直課と本社共通に分けて計算する

モデルとして、3店舗の会社で考えます(仮設の数字例です)。 残したい経常利益は900万円、固定費は2,700万円とします。

稼ぐべき粗利総額は 900万円 + 2,700万円 = 3,600万円。粗利率40%なら必要な売上は9,000万円です。

3店舗の会社の全社目標(モデル例)
赤枠の固定費2,700万円が配分の対象です。このうち店舗に直課できるのは2,000万円で、残る700万円は本社共通として全社に残します。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 40.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

粗利総額3,600万円を3店舗に配り、直課の固定費だけを持たせます。

A店B店C店合計
粗利総額の目標1,600万円1,200万円800万円3,600万円
直課の固定費850万円700万円450万円2,000万円
部門利益750万円500万円350万円1,600万円

本社共通の固定費は、全社の2,700万円から直課分2,000万円を引いた700万円です。 これは本部が持ち、店舗には配りません。

均等割りにすると小さい店が赤字に見える

同じ会社を均等割りで見ると、景色が変わります。 2,700万円 ÷ 3店舗 = 900万円 が、各店に一律で乗ります。

A店B店C店
均等割りで出る利益700万円300万円−100万円
直課だけの部門利益750万円500万円350万円
50万円200万円450万円

C店は均等割りだと100万円の赤字に見えますが、実際には350万円を稼いでいます。 この店を閉めると、会社の利益は350万円減ります。

C店の目標(モデル例)
赤枠の粗利総額800万円がC店に配られた目標です。直課の固定費450万円を引いた350万円が部門利益で、本社共通の固定費はここに入りません。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 40.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

差の合計にも意味があります。50万円 + 200万円 + 450万円 = 700万円 は、本社共通の固定費と一致します。 均等割りとは、この700万円を店舗へ押し出す操作にほかなりません。

部門利益の合計は全社の利益と一致しない

配り終えたら、2本の検算を必ず通します。

① 店舗の粗利総額の合計 = 会社全体の必要粗利総額   1,600万円 + 1,200万円 + 800万円 = 3,600万円

② 部門利益の合計 − 本社共通の固定費 = 会社全体の目標経常利益   1,600万円 − 700万円 = 900万円

部門利益の合計1,600万円と全社の経常利益900万円は一致しません。 これは計算の誤りではなく、本社共通の700万円を配っていないためです。 差が本社共通の固定費とぴったり合っていれば、正しく配れています。

総額が収まっていても費目別では超える

直課の合計2,000万円は、全社の固定費2,700万円に収まっています。 それでも配りすぎている場合があります。

費目全社の予算店舗への直課本社共通に残る額
人件費(F1)1,400万円1,450万円−50万円
経費(F2)900万円550万円350万円
その他400万円0円400万円
合計2,700万円2,000万円700万円

人件費だけを見ると、店舗に配った1,450万円が全社の予算1,400万円を50万円超えています。 本社共通に残る人件費がマイナス50万円になり、管理部門の給与を払う原資が計画上どこにもありません。 総額の欄は2,000万円と2,700万円で収まっているため、合計だけ見ていると気づけません。 費目ごとの検算を、総額の検算とは別に行う理由がここにあります。 費目の分け方に迷うときは固定費と変動費の分け方を先に読むと整理しやすくなります。

店舗への直課の合計を総額で見ると全社の固定費(F)の予算に収まって見えるのに、人件費・経費・その他の費目別に並べ直すと人件費だけが予算の枠をはみ出していることを左右に並べた図
赤枠の人件費だけが予算の枠をはみ出しています。左のように総額で比べると収まって見えるため、この配りすぎは合計欄には現れません。費目ごとに並べ直して初めて見つかります。

まとめ

  • 配賦基準を変えても、負担の重い店が入れ替わるだけで不満は消えない
  • おかしいと感じる正体は、動かせない費用で評価される権限と責任のズレ
  • 店舗に持たせるのは直課の固定費だけ。残りは本社共通として全社に残す
  • 均等割りは本社共通の固定費を店舗へ押し出す操作で、小さい店が赤字に見える
  • 総額が収まっていても費目別では超えることがあり、検算は2種類必要になる

GYAKUSAN を使うと、配らない固定費と検算が自動で出る

無料シミュレーター GYAKUSAN は、固定費を配賦せず、直課と本社共通に分けて持つ作りになっています。

入れる数字GYAKUSAN が出す数字
全社の固定費を F1〜F5 の内訳で費目ごとの全社の予算
店舗ごとの粗利総額の目標と直課固定費店舗の利益と、本社共通に残る固定費
(自動)検算:店舗の利益の合計 − 本社共通の固定費 = 全社の経常利益
(自動)費目ごとの配りすぎ

この記事のモデル例を入れると、こうなります。

店舗の利益 750万円 + 500万円 + 350万円 − 本社共通の固定費700万円 = 900万円(全社の経常利益と一致)

人件費(F1)だけを見ると、全社予算1,400万円に対して直課が1,450万円で、50万円の配りすぎと表示されます

無料版で作れる部門は2つまでなので、まず2店舗で配り方を試せます。 登録は要らず、入れた数字はサーバーに送られません。