飲食店で利益が残らないのは、原価率が高いからとは限りません。原価率や売上を目標にして、利益を最後の余りにしているからです。

先に決めるのは、残したい利益と固定費の2つです。足せば、1年で稼ぐべき粗利総額が出ます。あとはその粗利総額を、定食・夜の料理・ドリンクの「1品の粗利 × 数」で組むだけです。

この記事では、原価率をきちんと守っている店がなぜ赤字になるのかを確かめてから、粗利総額をメニューで組む手順をモデル例の数字で追います。

原価率30%を守っても、利益は残らない

私はアイスクリームチェーンの店長として、アルバイト40人の店を任されていました。

店の現場で毎日見ているのは、売上と原価率と人件費です。残したい利益から逆算した数字は、その中にありません。

モデルとして、ランチと夜の営業をしている1店舗の飲食店で考えます(モデル例)。年間300日営業で、メニューは大きく3つに分かれます。

メニュー単価(P)原価(V)原価率1品の粗利(M)年間の数(Q)粗利
ランチ定食1,000円400円40%600円12,000食(1日40食)720万円
夜の料理(1皿の平均)800円200円25%600円30,000皿(1日100皿)1,800万円
ドリンク(1杯の平均)500円150円30%350円37,200杯(1日124杯)1,302万円
合計3,822万円

店全体で見ると、こうなります。

項目金額
総売上(PQ)5,460万円
変動費(VQ・原価率30.0%)1,638万円
粗利総額(MQ)3,822万円
固定費(F)3,840万円
経常利益(G)−18万円
原価率30.0%の店に残った額(モデル例)
総売上5,460万円から食材などの原価1,638万円を引いた粗利総額3,822万円では、固定費3,840万円に18万円届きません。原価率は30.0%で崩れていないのに、赤字です。目標利益(G)と固定費(F)から 必要な粗利総額(MQ)を出し、 想定の粗利率 70.0% で割って必要売上(PQ)を求めています。

原価率は30.0%で、よく言われる目安の範囲に収まっています。それでも18万円の赤字です。

この店に足りなかったのは原価率の管理ではありません。固定費3,840万円を払ったうえで、いくら残すつもりだったのか。その額が決まっていなかったことです。

原価率とFL比率は、利益の額を答えない

FL比率は、食材費と人件費の合計が売上に占める割合です。この店の人件費は年2,160万円なので、次のようになります。

FL比率 =(食材費1,638万円 + 人件費2,160万円)÷ 総売上5,460万円 = 69.6%

FL比率は60%以内、という目安がよく使われます。この店はその目安を9.6ポイント超えています。では、人件費を削って60%に収めれば安全になるのでしょうか。

問題は、その60%という数字が、この店の事情を何も知らないことです。家賃がいくらか、借入をいくら返しているかは、率の中に入っていません。

よく見る率答えられること答えられないこと
原価率30%1品の食材費が妥当か固定費を払ったあとに何が残るか
FL比率60%以内人と食材に使いすぎていないか返済に必要な利益はいくらか
売上高経常利益率利益が売上に対して薄いか厚いかこの店がいくら残すべきか
FL比率が見ているのは食材費(原価)と人件費の2つだけで、その合計を総売上で割った率であることを示した図。率の外側には家賃・水道光熱費、借入金の支払利息、販促・求人・教育研修、減価償却費、費用ではない借入金の元本返済、そして残したい利益が並んでいる。
左がFL比率の中身、右が率に入っていない費用です。家賃も借入金の元本返済も率の外にあるため、率だけを目安にしても、いくら残すべきかは決まりません。

率は決めるための道具ではなく、決めた計画をあとで検算するための道具です。このあと作る計画のFL比率は65.8%〜66.5%で、目安の60%を超えますが、借入の返済は回ります。

先に決めるのは、残したい利益と固定費

逆算では、残したい経常利益を最初に置きます。飲食店でこの額の土台になるのは、たいてい借入金の返済です。

返済の元本は費用ではないので損益計算書に出てきませんが、口座からは出ていきます。一方で減価償却費は利益を減らしますが、現金は出ていきません。

設備資金2,160万円を5年で返している店なら、年間の返済額は432万円です(モデル例)。実効税率を30%とすると、返済に必要な税引前の利益は次のとおりです。

目標経常利益 =(年間返済額432万円 − 減価償却費180万円)÷(1 − 30%)= 360万円

税率で割り戻すのは、返済に充てるお金が税金を払ったあとに残る額だからです。ここに設備投資や万一への備えを積み上げる手順は、目標利益の決め方にまとめました。

固定費3,840万円は、5つに分けて持ちます。ひとまとめにすると、削る話が「どこかを削る」で終わるからです。

費目飲食店での中身年間
F1人件費社員・アルバイトの給与、社会保険料2,160万円
F2経費家賃、水道光熱費、通信費、消耗品1,320万円
F3営業外費用借入金の支払利息60万円
F4戦略費販促、求人広告、教育研修120万円
F5減価償却費厨房機器・内装の償却180万円
合計3,840万円
固定費を5つに分けて、削ったときの効き方を並べた図。人件費は頭数から削ると店が回らなくなる、経費は家賃や契約の見直しが今期の利益に直接きく、営業外費用は借入の元本を返した分だけ下がる、戦略費は止めれば当期は浮くが来期の客数と人手が細る、減価償却費は削っても出ていく現金は増えない。
同じ固定費でも、削ったときに返ってくるものが違います。赤枠の戦略費は当期の利益にすぐ効きますが、その分だけ来期の客数と人手が細ります。

アルバイトの人件費をここで固定費に置いているのは、売上が半分になった月に人件費を半分にはできないからです。判定の基準は固定費と変動費の分け方にまとめました。

利益と固定費が決まれば、稼ぐべき粗利総額は足し算で出ます。

稼ぐべき粗利総額 = 目標利益360万円 + 固定費3,840万円 = 4,200万円

いまの粗利総額は3,822万円なので、足りないのは378万円です。1日あたりにすると、300日営業で12,600円になります。

足りない粗利を、メニューの「1品の粗利×数」で埋める

ここで「売上をあといくら」と考えないのがポイントです。足りないのは売上ではなく粗利なので、1品で残る粗利の額で割ります。

埋め方1品の粗利1日あと何品年間
案A:夜の料理を増やす600円21皿6,300皿
案B:ドリンクを増やす350円36杯10,800杯
案C:ランチ定食を増やす600円21食6,300食

3つとも、増える粗利は378万円で同じです。粗利総額は4,200万円になり、経常利益360万円が残ります。

それぞれの案の売上と原価率を並べると、ばらばらです。

案A:夜の料理案B:ドリンク案C:ランチ定食
総売上5,964万円6,000万円6,090万円
原価率29.6%30.0%31.0%
粗利総額4,200万円4,200万円4,200万円
経常利益360万円360万円360万円

原価率を目標にしていると、案Cは「原価率が悪化した失敗」に見えます。売上を目標にしていると、案Aは「売上が一番少ない案」に見えます。残る利益はどれも同じです。売上も原価率も、どのメニューをいくつ出したかで決まる結果で、目標にはなりません。

案A:夜の料理を1日21皿増やす(モデル例)

ランチ定食

単価P1,000円
原価V400円v率 40.0%
1個あたり粗利M600円m率 60.0%
数量Q12,000個

=粗利MQ720万円

夜の料理+6,300個

単価P800円
原価V200円v率 25.0%
1個あたり粗利M600円m率 75.0%
数量Q36,300個

=粗利MQ2,178万円

ドリンク

単価P500円
原価V150円v率 30.0%
1個あたり粗利M350円m率 70.0%
数量Q37,200個

=粗利MQ1,302万円

ランチ定食+夜の料理+ドリンクの合計

左は1個あたりの中身(単価=原価+1個あたり粗利)× 数量。商品ごとの粗利を足したものが、右の図の粗利総額(MQ)4,200万円 です。 そこから固定費(F)3,840万円 を引いた残りが経常利益(G)です。
案C:ランチ定食を1日21食増やす(モデル例)

ランチ定食+6,300個

単価P1,000円
原価V400円v率 40.0%
1個あたり粗利M600円m率 60.0%
数量Q18,300個

=粗利MQ1,098万円

夜の料理

単価P800円
原価V200円v率 25.0%
1個あたり粗利M600円m率 75.0%
数量Q30,000個

=粗利MQ1,800万円

ドリンク

単価P500円
原価V150円v率 30.0%
1個あたり粗利M350円m率 70.0%
数量Q37,200個

=粗利MQ1,302万円

ランチ定食+夜の料理+ドリンクの合計

左は1個あたりの中身(単価=原価+1個あたり粗利)× 数量。商品ごとの粗利を足したものが、右の図の粗利総額(MQ)4,200万円 です。 そこから固定費(F)3,840万円 を引いた残りが経常利益(G)です。

ランチ定食は原価率40%で、3つの中で一番「悪いメニュー」に見えます。でも1食で残る粗利は600円で、原価率25%の夜の料理と同じです。一方、原価率30%のドリンクは1杯で350円しか残らないので、同じ粗利を作るのに36杯要ります。

どの案を選ぶかは、店の事情で決める戦略です。ランチの席があと21食ぶん回るのか、夜の料理を21皿多く出す人手があるのか、1卓あたりのドリンクをあと1杯ずつ勧められるのか。現場を一番知っている人が決めればよい話で、「粗利をあと1日12,600円つくってほしい。作り方は任せる」という指示でも成り立ちます。

値上げで1品の粗利そのものを厚くする手もあります。上げた分に原価がついてこない仕組みは、値上げで利益はどれくらい変わるかで追いかけています。

毎日追いかけるのは、売上ではなくその日の粗利

計画に対して追いかけるのも、粗利総額と固定費の2つです。固定費が計画どおりなら、粗利総額が届いた分だけ利益が残ります。

1日あたりの必要な粗利は、4,200万円 ÷ 300日 = 14万円です。レジの売上ではなく、メニューごとの出数に1品の粗利を掛けて足します。

メニューその日の出数1品の粗利粗利
ランチ定食42食600円25,200円
夜の料理108皿600円64,800円
ドリンク130杯350円45,500円
合計135,500円

この日は14万円に4,500円足りません。夜の料理なら8皿、ドリンクなら13杯ぶんです。売上で見ていると「今日は19万円売れた」で終わりますが、粗利で見ると明日の打ち手まで降りてきます。

月末には、固定費が計画の月320万円(3,840万円 ÷ 12か月)に収まったかを確かめます。粗利が届いて、固定費が計画どおりなら、利益は計画どおり残ります。日ごとに数字を締めるやり方は日次決算のやり方にまとめました。

まとめ

  • 利益が残らない原因は原価率とは限らない。モデル例の店は原価率30.0%で18万円の赤字だった
  • 原価率もFL比率も、家賃と借入の返済額を知らないので、利益の目標にはならない
  • 先に決めるのは残したい利益と固定費。足すと稼ぐべき粗利総額(モデル例は4,200万円)が出る
  • 足りない粗利は、メニューの「1品の粗利×数」で埋める。売上と原価率は組み合わせの結果
  • 原価率の高いメニューでも、1品の粗利が厚ければ稼ぎ頭になる。比べるのは率ではなく額
  • 毎日追うのは売上ではなくその日の粗利、月末に見るのは固定費

GYAKUSAN を使うと、粗利総額とメニューの積み上げが並ぶ

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入れる数字GYAKUSAN が出す数字
残したい経常利益(G)360万円と固定費(F)3,840万円稼ぐべき粗利総額 4,200万円
ランチ定食・夜の料理・ドリンクの単価(P)・原価(V)と、見込みの数(Q)メニューごとの粗利と、その積み上げ
(積み上げと目標を突き合わせる)粗利総額があといくら足りないか

無料版でも、1つの部門に3つまで商品を入れられます。定食・夜の料理・ドリンクの3つで、いまの出数を入れたまま残したい利益を入れると、粗利があといくら足りないかが先に見えます。数を入れ替えて、案A・案B・案Cのどれで届くかを比べてみてください。